教育雑記帳

2013年早生まれ男子のママ。英語教育、理数教育、親の観点から読むビジネス書についてゆるく書いています。

【家庭教育】大人になる前に〜『男の子が14歳になったら、これだけは伝えなさい』

たまたま、地元の図書館で目につき、手に取った本。

息子の思春期はまだまだ先だけど、目次にあった「大人になる前に知らなければいけないことがある」という言葉に共感するところがあり、借りてみた。

 

『男の子が14歳になったら、これだけは伝えなさい』

松永暢史 ・著/徳間書店(2013/6/30)

 

 

1. 総評★★★☆☆

私の期待していたベクトルとは少し違っている部分があり、もう少し深く掘り下げて欲しい箇所もあった。全体的に、著者の経験などに基づく主観的な主張が多く、表層的という印象。最終章は、今の思考に至るきっかけとなった自身の半生を語っている。表現も、若干軽薄(笑)と感じられるところも。

 

とはいえ、「大人になる前に伝えたいことがある」というテーマ設定には共感するものがある。また、収入や税金の話を我事として捉え、それも踏まえての生き方を早いうちから意識させておきたいと思ったので、備忘録的に残しておく。

 

ちなみに、本書の著者も、ほかの多くの教育関係者と同様に、とにかく読書を通しての文章読解力、そして論理的な文章構築能力の大切さを繰り返し説いている。その大切さを「他人から支配されないために必要不可欠なスキル」という文脈の中で語っているのが、ちょっと面白い。ここで言う”他人”とは、AI(人工知能)も含むんだろうと思う。

全く同意。

 

2. 手に取った理由

自分が相応のトシになったからか、自身や周囲を客観的に見て、大人になる前に「大人って何?」「社会ってどうなってる?」というテーマについて、意識して子どもと考える必要があるのではないか、と思うことが多くなってきた。

これからの激動の時代、ロールモデルと呼べるようなものは、今ある形から変化、あるいは細分化されるのではないか?であれば、「大人」や「社会」について、漠然とした表面的な理解ではなく、もっと根本的で本質的な部分を、自分なりに解釈し、自分の中でロールモデルを作り上げる作業(あるいは目利きする力量)が必要になるのではないか?そう考えるようになった。

 

息子はまだ小学2年生で、本人がこのテーマを課題とするのは先だが、普段の日常会話の中でも、少しずつ意識していきたい。

 

3. 備忘録

現代ビジネスの本質は「支配」である

 私たちの究極の「支配者」とは国家である日本国であり、所属する企業たる組織である。私たちから集めた金を「支配者側」が多く取れるようにする分配するという事実があり、「支配される側」としては、

  1. 税を収めた後でも十分なお金が残る
  2. 可能な限り、税を収めないで充実感がある状態になる

上記いずれかのベクトルを見極めて、自分の活動を決定していくのが正しいことになる。具体的な論の展開は第3章「お金を知る」、第4章「起業を知る」、第5章「能力を知る」につながっていく。

  

「お金」と「起業」について・・・収入の現実と税金の仕組み

収入の現実を考え、税金の仕組みをざっくりと説明。その上で、企業勤務だけでは”リッチ”や”セレブ”になれないこと、収入が高いイメージがある医者(開業医&勤務医)や弁護士の実情についても触れている。さらに、「なるべく”支配”を受けないようにするには、自分で起業しよう!」という展開になる。ここでいう「”支配”を受けないようにする」とは、低賃金労働で搾取されることから逃れることはもちろん、国に治める税金は最小限にしよう、起業ならそれができる、という超リアルな話が書かれている。

 

独立起業経験者の私から見れば、起業ネタを見つけ、それで継続的に売り上げを立てていくことの大変さは、身を以て知っている。しかし同時に、法人所得から色々と経費(従業員賞与含む)で落として法人の利益を圧縮&法人税を節税し、自身の給与は抑えることで自身の所得税も低くできると言うメリットも、大いに実感として理解できる。

つまり、会社のオーナー経営者は、「お金を稼ぐ→お金を使う→残りから税金を払う」というサイクルを回せるが、会社のために働いている人は、「お金を稼ぐ→税金を払う→お金を使う」となり、この差はあまりにも大きいので「起業を目指そう!」というのだ。

 

会社オーナーは諸々経費計上して節税できることはズルイのか?自分が儲けるために他人を安い賃金で雇うのは良いことか?などの議論も本書でされていて、一定の説得力がある。すなわち、起業する=人が働く機会を創出している、被雇用者が避けたがるリスクや責任を背負っている、社員にも賞与をたくさん払えば良い、など。そして、その是非は別として、今の資本主義社会の中を生き抜くということは、ある意味で自ら起業する方向性は正しい、と断じている。(結果的に、雇ってもらうほうがいいとわかって、自分も納得して労働を提供するのであれば構わないが、はじめから「被雇用者」を目指す生き方は否定している)

 

起業するにはアイディアと日本語能力が必要不可欠。学校教育は未来の一般労働者を教育するためのものだから、自ら鍛錬して高度な日本語能力(読解力と文章力)を身につけよ、という。

 

「能力」を知る・・・起業以外で「支配」から免れる道はフリーター?

起業をして社会的・経済的に成功しても、自分のしたいことを封印してお金や名声だけのために生きているだけでは、世間の価値観に「支配」されていることと変わらない。本書では、起業以外に「支配」から免れる道として、自分の自由時間を優先して、できるだけ働かずに好きなことをやりながら、最低限の生活費で暮らす方法についても検討している。フリーター、資産家の家庭、Iターンで自給自足の生活スタイルを取り上げているが、現実的に考えると、子どもを持つという世代交代は諦める必要がありそうだ、という結論。

 

また、暇な時間に何をするか?という問いへは、自己を高めることにつながる「道」「学」「芸」「術」「技」に時間を使え、と述べている。バーチャル体験にしかならないテレビやネットでの情報収集やゲームは、消費意欲を掻き立てられるだけで、無駄である、と。

 

4. 本書から得た学びと感想

本書を通じて著者から受け取ったメッセージ:

  • 世界は「支配」する側とされる側(=お金を取る/取られる)で成り立っている
  • 取られるお金を最小に抑えて幸せになれる方向を考えよ
  • 起業(&節税)または最低限の生活費で好きなように暮らす(著者は起業オシ)
  • 起業のためには、アイディアを磨き日本語能力を鍛えよ
  • 余暇には、自己を高める活動「道」「学」「芸」「術」「技」に励め

「組織に勤務」vs「起業」という単純な二元論ではない。

最初から漫然と”被雇用者”を最終目的地にしてはいけない」と伝えるのは、全く同意。

将来、起業するための修行や資金作りを目的として、あるいは被雇用者でいた方がよいポジションやタイミングだから、という理由で意識的・戦略的に被雇用者になることはアリだろう。だが、漫然と周囲に流された結果として被雇用者となることは、避けなければならない。

息子が、意識的に自分の人生を作れるよう、年齢に応じて考えることのできる話題を、日常の会話に織り込んでいきたい。