教育雑記帳

2013年早生まれ男子のママ。英語教育、理数教育、親の観点から読むビジネス書についてゆるく書いています。

【家庭教育】「ひろつるメソッド」から学ぶ

 ちょっと前から気になっていた「ひろつるメソッド」。

 「娘が地方公立高校から塾なしでハーバードに現役合格」なんてキャッチフレーズ、敷居が高いというか、世界が違いすぎるというか、とにかく、とっつきづらいイメージがあって、なんとなく敬遠してきた。

 けれど、息子の英語家庭教育について真剣に考えはじめた時に手に取った『おうちでほぼバイリンガルの育て方』で、ひろつるメソッドの概要を知り、英語教育の側面だけでなく、廣津留家の教育観をもうちょっと知りたくなった。というのも、世代が違うとはいえ、私自身、高校まで地方公立学校で過ごし、大学受験や将来のキャリアイメージについて、かなり狭い範囲でしか情報を持っていなかったことを後から知ったからだ。

 都市部と地方の情報格差は大きい。インターネットで世界に直接つながれるようになった今でも、日常生活の中で五感からインプットされる情報の差は大きいと思う。どのような環境で育てたら、地方在住の子どもが、世界どころかハーバードという世界トップクラスを目指そう、という意識になれたのか、純粋に好奇心から知りたくなったのだ。

 ひろつるメソッドの英語教育法については、別の記事で書いてみようと思う。今回は家庭教育の考え方について。

 

 

 

 『世界に通用する一流の育て方』を読んだ感想と備忘録

早速、地元の図書館にあった廣津留真理さん著作を借りて読んでみた。

 

 

私自身、子供を授かった時にはある程度教育本を読んだものの、200冊もの教育本を読破したという廣津留さんは、やはりタダモノではない。カナダのギフテッド教育を世に知らしめた大川翔くんの母親を想起させる。

この本の中で、共感し、自分で改めて噛みしめたい言葉、学びや気づきにつながった箇所をピックアップする。

 

1. 「親が積極的に子どもの勉強にコミット」

 第1章に登場する言葉。これはもちろん、我が子の教育に熱心な親は当然のこととしていると思う。私自身も、息子を産んでから、そのつもりでやってきた。しかし、覚悟の決め方が甘かったかもしれない、と思った。そう思わされた言葉が「義務教育は学校に外注、それ以外は家庭学習」という廣津留家の方針。学校だけでなく、良かれと思って通わせていた英語教室、本当は自分が手抜きをしたくて、あるいは安心感だけのためだったのではないか?息子が取り組んでいる通信教育も、親である自分が、自身の目で問題集などを吟味・選択する時間と手間を惜しんでいるだけではないのか?家庭(親)が主体性を持って進めるのだ、という覚悟を再確認させられた。

 この言葉は、第4章の「ひろつる式<非常識>受験メソッド」にもつながる。

 

2. 子どもは「未来から来た人」と思えば腹も立たない

 子どもが幼くてワガママなどで号泣された時、田中茂樹さんの『子どもが幸せになることば』に出てきた言葉(子どもは「現実が自分の思い通りにならないつらさを一つひとつ学んでいる」 ※本の感想はこちら)を思い出すようにしている。それに通ずる考え方だと思う。未来人である子どもの考え方や行動を、旧人類である自分の物差しで一方的に測ってはいけない。何かをした、あるいはしなかった時、その理由を冷静に尋ねる。学習面であれば、子どものやる気が下がっているのは親の方に原因があるのかも。褒め方が足りないのか?子どもに押し付けていないだろうか?

 

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3. 小学生からの生活習慣で取り入れたいこと

  • To Doリストを自分で作ってマネジメントさせる。

  息子は小1から親が言うまでもなく、ダイソーでホワイトボードを買ってきてやり始めた。終わったことにチェックをつけるのは楽しいらしい。2年に上がってからやっていなかったので、復活をさせよう。

  • 学校の勉強は平日だけ、週末は課外活動

  意識してはいたけれど、コロナが始まってからは外出をどうしても控えがちだし、イベント自体も減っている。「ウィズ・コロナ」でもできることを探そう。

  • 親が読まないような本を子どもに読ませない 

  これは、肝に銘じないと!親は「ためになるから」と自分では読まないような本を押し付けてしまいがちだが、子どもは一人の人格。本人が興味なければ読まない

 

4. 【重要】子どもの不調を招く3つのサイン ※以下は全て引用

 (1) 前もって失敗の言い訳をつくる(セルフ・ハンディキャップ)

 テスト、スポーツ大会、各種コンクール前には、子どもは強いストレスにさらされる。ストレス耐性が低い子は、無意識のうちに失敗する方向へ自ら転んでしまう。そして、前もって失敗の言い訳をして予防線を張ってしまう。<怖い理由>前もって失敗の言い訳をし、意図せずとも、本人の言い訳通りに失敗する経験が続くと、全般的な意欲低下につながる。<予防法>平常心で臨めるようにするには、普段からの親の”褒めパワー”が有効。”小さな勝ち癖”が身につき、それが自信と平常心につながる。

 

 (2) 課題の先延ばし(プロクラスティネーション)

  やるべきことがあるにもかかわらず「あとでやろう」とすること。単なるダラダラとは本質的に違う。<怖い理由>先延ばしにする課題がいくら増えても怖くなくなる”先延ばし癖”がつくと、「いずれやる」「やればできる」と言い訳ばかりでいつまでなっても何もやらない子どもになる。また、「あれもやってない」「これもやってない」というストレスが澱のように溜まってしまう。「やらないからできない」に変わってしまう。<予防法>先延ばしの理由を親が察知して支援する。理由a.課題をこなす能力がないと恐れいている=とりあえずやってみて、課題解決のために必要な能力がどのくらいあるかチェック。あまりに不足している場合は、身の丈に合った課題から始める。理由b.ストレス耐性が低い=親の”褒めパワー”で自己効力感を高める。理由c.時間管理能力が低い=ToDoリストを活用する。子どもの調子の良い時間帯を見つけて、そこで集中的に課題解決に取り組む。

 

 (3)肉体的に具合の悪いところがある

専門医にかかる。また、最初のサイン(1)「前もって失敗の言い訳をつくる」ために不調を装っていると、風邪を引いていないのに熱っぽくなることもある。

 

 

5. ひろつる式<非常識>受験メソッド 

廣津留さんいわく、「ドラスティックなことをしない限り、時代遅れの学校教育の悪癖から子どもは守れない」とのこと。教育本に限らず、ビジネス書や社会科学の本、哲学書まで様々な情報に触れ、激動の時代を生きる子どもには新しい教育アプローチが必要だと考える親には、参考になる考え方もあると思う。

 

(1) 模試を受けない

学力テストは絶対評価ではなく「相対評価」であることに注意。ごく普通の生徒たちは同じ集団にライバルがひしめいているため、常に不合格の不安にさらされている。その不安を煽るためにあるのが模試、という廣津留さんの解釈。「我が子が『ごく普通の生徒』という母集団から一刻も早く抜け出られるように、その競争事態から降りることも選択肢に入れるべき」という言葉には全くの同感しかない。強烈な世界観や独特の価値観を持つ子になれるように、可能な限り早い段階から背中を押してあげる。それこそ、我が家でも実践したいこと。しかし、「非常識な道」を進むのは、勇気がいる。目の前の子どもと向き合い、しっかりした方向性を持たないと、危なっかしいようにも思える。もがきながらも、この道を行きたい。

 

(2)学年1番にならない

自分で言うのもなんだけど、私自身は、中学から高校まで、学年1番を目指し、実現してきた子どもだった。当時は、自分の住んでいたド田舎から一刻も早く抜け出したい、親が納得してくれる脱出方法は首都圏の偏差値の高い大学に進学すること、というそれだけが支えとなっていた。だから、自分の身に染み付いたこの考え方から脱却するのは意識しないと難しい、と自分に言い聞かせている。学年1番にこだわると、かなりの時間を全ての科目の勉強に注がなけれなならない。限られた時間と体力を、本人の得意な分野に注がせたい。

 

(3) 塾に通わない

私も夫も、学習塾に通わずに過ごしてきたので、これはすんなり受け入れられる。ただ、今住んでいるエリアが教育熱心な学区のため、中学受験などの情報も耳に入ってくる。一時期は「中学受験した方がいいのかな?」「それなら、塾通いは必要かな?」との思いがかすめたこともあった。でも、学校の勉強の補習が目的ではなく、「塾=親にはできない、”圧倒的に得意な科目”にするための場所」ということであれば、通う意味があるな、と頭の整理がついた。

 

(4) 苦手科目は捨てる

考え方に注意が必要。平均的に全教科がまんべんなくできる、というのは学校の外に出てしまうと、あまり意味がない。圧倒的に得意な科目に力を注ぐ、そのための苦手科目は捨てる、という解釈。

 

(5) 宿題の答えは丸写し

カンニングという意味では、もちろん、ない。これを適用させるのは、正解があらかじめ決まっている「選択問題」であれば、という条件がつく。答えを丸写ししながら丸暗記することによって、問題を解くのにかかる時間を節約し、理解を優先した学習ができる。宿題の拒否は社会のルールに反するので、提出はするけれど、宿題の本来の目的である「学習」はする、という解釈。

 

6. ハーバード大学にまつわるあれこれ

(1) お嬢さんがハーバード受験を思い立つまで

 私が一番好奇心をそそられた、そもそも、なぜお嬢さん(すみれさん)がハーバード大学を目指すことになったのか、そのきっかけは本書の第9章に書かれている。 廣津留さんは、すみれさんが幼い頃から大学受験をゴールとした家庭教育をしていなかったとのこと。そのため、高校生になっても志望校は特になく、塾通いを一度もしていないので日本の各大学の偏差値も知らず、大学名を口にすることもなかった、とある。

 まず、このこと自体が驚きである。「我が子は大学受験に囚われることなく、自由にのびのびと自分の好きなことに没頭して、才能を伸ばして欲しい」と思っていても、自分の受けてきた偏差値重視教育から、親自らが真に脱却することは本当に難しい。

 すみれさんに転機が訪れたのは、イタリアの音楽コンクールにチャレンジして優勝したとき。そこで得た奨学金で、高2のときに全米バイオリン演奏ツアーを行う。そして、ツアー後に「せっかくだから」という軽い気持ちでプリンストン大学ハーバード大学を見学。この機会を最大限に活用するため、学生が案内してくれるツアーに参加。プリンストン大学の見学では大人しかったすみれさんが、ハーバード大学ではものすごく嬉しそうにしていた。案内してくれた学生と、あれこれ話し込んで生き生きとしていた。そして、帰国後は自分でハーバード大学のホームページをチェックして、自分で入試情報を集めるようになっていた。

 「調べてみると、ハーバード受験のハードルは高くない。必要な条件を満たせば、ネット経由で日本にいながら受験できる」とのことからチャレンジを決意。

と描写されている。

 

 世間一般では、大学受験に備えた冬季講習でおおわらわの高2冬休み中、受験をまだ考えていないすみれさんは、母親との散歩中にふと、「ハーバードに行こうかな」と言い出した、って。。。かっこよすぎる。ハーバードを幼少期から目指して「受験対策」をしたわけでもないのに、それまでに身に付けていた「絶対的」な能力・スキルが発揮されて掴み取った合格、ということだろう。目の前の「受験」に振り回されることなく、本質とは何かを考え続け、ブレずにやっていれば、こういうことも実現できるのだ、と勇気をもらったような気がする。また、実際に大学キャンパスに出向き、そこの学生たちと直接触れ合う機会を持つことの意義の大きさにハッとさせられる。と同時に、直接コミュニケーションを取れるだけの英語力が備わっていてこその機会、とも言える。やはり、視野を広く持ち、目の前にチャンスが来たら掴むためにも、英語は必須だな!と再確認。

(2) ハーバード大学受験に必要なこと

学業優秀であることはもちろんだけれど、特に重要で日本ではあまり意識することの無いもの。それは「課外活動の成果」と「エッセイ(小論文)」。

<課外活動>勉強以外の課外活動を重視するハーバードでは、ポートフォリオの提出を認めている(すみれさんはバイオリンの演奏をCDに収めて提出)。ただし、大学院の教授がポートフォリオを判定するため、「価値が低いとみなされた作品は減点対象となるので、無理に送らない方が無難」との警告があるそうだ。

<エッセイ>すみれさんは、アマゾンでハーバード生が書いたエッセイ選集を買って、エッセイの書き方を研究し、自分なりに自分の人生を振り返ってエッセイを仕上げたとのこと。その本によると、大学入試のエッセイは「困難克服系」「誰にも真似できない経験系」「日常を切り取っていきいきと綴る文学系」「他者を通して自分を見つめ直すストーリー系」の4パターン。

 

(3) ハーバード生の教え(いくつかピックアップ)
  • 締め切りギリギリに片付ける:膨大なタスクを抱える人たちの時間管理術
  • コミュニケーションは短く端的、スピーディー
  • 5分で80%を完成させ、それをベースに話し合いながら修正を重ねる

 

 まとめ:『世界に通用する一流の育て方』から学んだこと

本書を手に取ったきっかけ「どうして地方在住で公立学校の子がハーバード大学を受けようなどと思うに至ったか?」という疑問への答えは、

  • 「日本の大学受験」に照準を合わせず、独自の信念に基づいた家庭教育
  • 将来、選択肢を多く持てるようにとの考えで、幼少期から親が英語を教えたこと
  • 得意なバイオリンがきっかけで、世界を知る機会を持っていたこと
  • ハーバード大学のキャンパスツアーで、案内役の学生と直接英語で交流したこと

 結果的に、昔からハーバードを狙って対策を立てたわけでもないのに、導かれるようにハーバード大学を受けようと思った、ということらしい。

 

 言われてみれば、スッと筋の通る話。とはいえ、やはり、バイオリンに熱中し没頭し上達できるだけの才能を持ち合わせていたこと、親もそれを惜しみなく支援できた環境にあったことなどを考えると、どの家庭でもできることではないだろう。

 

 それでも、私にとって、この本は非常に参考になった。今まで、モヤモヤしながら考えていたことが、多少ドラスティックな表現も含めてバチッと書かれていたので、スッキリ!というのが私の感想。