教育雑記帳

2013年早生まれ男子のママ。英語教育、理数教育、親の観点から読むビジネス書についてゆるく書いています。

【育児書】子育てそのものが幸せ!という原点を思い出そう

『子どもが幸せになることば』
田中茂樹 (ダイヤモンド社) 2019/2/28
 
 
我が家は、いわゆる”とても”教育熱心な家庭とは言えない。根本的に、両親共に、テキトーだから、世間の”とても”教育熱心な親を見てしまうと、ちょっと引いてしまうところがある。
 
とはいえ、子どもを授かったと分かったときから、ある程度の育児書を読み、どんな子どもに育てたいか夫婦で考え話し合い(願わくば、私たち両親よりも優秀で選択肢も多くて幸せな人生を送って欲しい!)、早期教育についても、多少の情報収集をしていた。昔からある「家庭保育園」や「七田式」をはじめ、近所の乳児教室の体験にも行ってきた。でも、子育ては親の思い通りにいくものではない、ということも知っている。子どもは親とは別人格だし、一人一人、性格や個性も異なる。
 
特に最近は、書店の育児書コーナーに寄れば、「世界最高」とか「一流」とか「IQが高い」といった言葉が枕詞につく育児書のなんと多いことか!タイトルも、中身も、ビジネス書コーナーにある、自己啓発本みたい。我が子の能力を最大限伸ばしてやれる親になりたい、と思う気持ちと、息詰まる感覚とが交錯する。そんなときに、全くベクトルの異なる、安心感に包まれる育児書を読んだ。
 

 

 

『子どもが幸せになることば』を読んだ感想と備忘録

1. 総評:★★★★★

育児で行き詰まっている、という親にこそ、読んで欲しい本!!

類書はたくさんあるけれど、最も納得感のあった本のうちの1冊。

自分も、今後も、行き詰まったら手に取りたい。

新しく親になる人に、ぜひ贈りたい本。

 

 著者は、医師であり臨床心理士であり、自身も奥様と共働きで4人の育児経験がある父親。子どもが赤ん坊の時期から高校生ぐらいまで、日常でよくある29の場面での「言いがちなことば」と、親子共に幸せを感じられると著者が考える、「子どもを信じることば」を対比させて紹介している。各項目の小見出し(=言葉)だけをみると、他の育児書などでも目にしたことがあるように見える。しかし、本文を読むと、より深く具体的に著者の考えが理解でき、子どもに注がれる眼差しの温かさに心を打たれる。

 

 育児とは、子どもを”賢く”するとか、そういうゴールを目指すのではなく、親にとって「子どもと過ごすこと自体がとても幸せで贅沢なこと」であるのだ、と繰り返し述べているのが印象的。今、子どもと一緒に過ごせる時間を大切にしよう、幸せなものにしよう、との決意を新たにした。同時に、育児において焦る必要はないのだと肩の力を抜くことができた。

 

 子どもを、将来”食いっぱぐれない”(または”稼げる”または”世界に通じる(?)”など)大人に育てるには、どうすればいいか、と悶々としたり焦る時は、この本の言葉を思い出そう!と自分に言い聞かせた。

 

 

2. 手に取った理由

 育児書はこれまでも何冊か読んできたが、息子が小学生になり、学童に行きたがらない、学校に行きたがらない、など新たなフェーズに差し掛かっている。この状況に対して自分の接し方はどうだろう?今後はどうすれば良いだろう?何か参考になれば、との思いで手に取った。

 

 

3. 本書の構成

生まれたときから子どもが親元を巣立つ13歳までの各フェーズごとに出会う場面に合う言葉が紹介されている。乳幼児期の子どもを持つ親はもちろん、絶賛反抗期只中の子どもを持つ親にも、参考になると思う。

 

【第1章】0〜3歳 子どもが世界と出会う時期

【第2章】3〜5歳 「その子らしさ」が出てくる時期

【第3章】6〜8歳 学校生活が始まる時期

【第4章】9〜12歳 思春期が始まる時期

【第5章】13歳以上 親子の別れが始まる時期

 

うちの息子は7歳なので、第3章がまさにドンピシャだったが、第1章〜2章の内容も、今でも使える言葉が多かったし、第4章以降は、これから出会うであろう場面とそのときの接し方について、心の準備(?)ができたと思う。

 

4. 印象に残った言葉

 心に響く言葉をたくさん見つけた。なんとなく感じていたことを明確にしてくれた言葉。新たな気づきを与えてくれた言葉。たくさんあるけれど、特に印象に残ったものを書き出しておく。忘れかけたときに、読み直して噛み締めるために。

 

 

◎そもそも子どもは元気な存在。その元気を守ってあげるのが親。

 

子どもはもともと元気な存在です。元気であれば、「幸せになるためにどうしたらいいか」を自分で探して動き始めます。 (p.3)

 

子どもの不登校、非行、摂食障害など、表面に現れた子どもの問題は色々であっても、ほとんどの親に共通している特徴があります。それは、家庭での子どもとのコミュニケーションが「操作的な会話(=歯磨きや宿題など動作を指示したり確認する声掛け)」がほとんどであり、「交流的な会話(=思いや考えを伝え合う声掛け)」がほとんどないということです。(中略)操作的な会話を控え、子どもが家でリラックスできるようにする、それを徹底する。それだけで子どもの様子は変わるのです。(p.142-143)
 

 

◎育児はほんの短い間のこと。幸せで贅沢な時間。

 

育児はそれ自体が目的であり、手段ではないということ。子どもと過ごすこと自体が、とても贅沢で幸せなことであること。 (p.4)

 

まだ子育て途上ではあるけれど、全く共感できる。乳幼児を見かけるたびに、息子と一日中、一緒に過ごせた時間はあっという間に過ぎていったな、と少し感傷に耽ってしまう。子どもをどう育てたい、という話の前に、今一緒にいる時間の幸福を心の底から味わおう。

 

「子どもをいかに良く成長させるか?」とか「そのために、親はどうしなければいけないか?」など、そういう姿勢ではなくて、「子どもに起こる成長や、子どもが自分で達成してくことを楽しみに待つ」という姿勢を意識できれば、育児の期間のしんどさを減らすだけでなく、喜びを増やせる。(p.30)

 

書店に行けば、「世界最高の」とか「一流の」といった言葉が枕詞についた育児書の、なんと多いことか!そんな言葉に踊らされ、焦ってはいけない!

 

 

◎良かれと思って言ってしまう言葉に注意

「言いがちなことば」は、子どものためを思って言ってしまいがちだけど、実は親が目先の安心を得ようとしていて、子どもの元気を奪う言葉です。(p.4)

 

思い当たるフシあり。言葉を発する前にひと呼吸置こう。

 

褒める、ということに、問題がある場合があります。それは、「褒める」と「アドバイスする」のは似ているからだと思います。褒めるとは「評価する」ことです。「それはいいね」は「それじゃないのはよくないよ」と言うのとある意味で同じです。(後略)
繊細だったり、大人の顔色を伺う傾向のある子ほど、褒められることばかりをやろうとしてしまう傾向があります。
そのような場合の問題点は、本当に自分がしたいことと、親に褒められるからすることの境目が曖昧になることです。(p.80)

 

私自身、褒められたい、認められたい、という気持ちが強かったように思う。そして、本当は自分は何をしたいのか、わからずにいたし、今もいるように思う。

 

子どもは、わざわざ褒められなくても、自分が達成したことに満足かどうかは、自分で味わっているのです。(p.81)

 

子どもは親のことが好きだから、親を喜ばせたいと思うでしょう。親の思いを果たそうと、子どもは背負い込むかもしれません。子どもの健気さは、大人の想像を超えていることがよくあります。「好きにしたらいいのよ」とか「楽しく生きてくれたらそれでいい」という「願い」も、「要求」となって、子どもに捉えられる可能性があると思います。真面目な子やがんばり屋の子どもほど、どこまでもがんばろうとするでしょう。
「そのままがいい」「そのままで大好きだ」など、そのままの子供を受け入れるような言葉がいいと思います。(p.197-199)

 

これは難しい。失われた時間は取り戻せないからこそ、「人生の先輩」として、親の失敗や経験をもとにした早めのアドバイスに意味があると思うこともある。押しつけや強要ではないように受け取ってもらうためには、どのような言葉がけが有効なのだろう?

 

子どもが自分で選んで、自分で楽しんだり苦労したりして、親以外の人や出来事から学んでいくことの大切さ、そのような子どもの経験へのリスペクトをしっかりもちましょう。(中略)子どものためにと「正しい」アドバイスをして嫌われるより、子どもが、親から見れば「正しくない」「未熟な」選択をするのを、勇気を持って見守る。親は、自分の「正しさ」に注意が必要だと思います。正しさを押し付けることが、いつも子どものためになるわけではない、ということに。(p.209-210)

 

◎親から見れば理不尽な要求をしている場面について

わざと親を困らせようとしてわがままを言っているのではなくて、世界が、現実が自分の思い通りにならないつらさを、一つひとつ学んでいる途中です。(p.52)

 

これは、昔の自分に教えてあげたい言葉。

 

泣き叫んでいる子どもと向き合って、自分が怒りでいっぱいになっていると、なかなか切り替えられません。(中略)
そんなとき、大人は、がんばれば、気持ちを切り替えられます。
でも、それは子どもにはできないことなのです。
だからこそ、「ああ、この子は思い通りにならない現実を学んでいるんだなぁ」と愛おしみながら向き合うのです。(p.53)

 

◎指しゃぶりや爪噛みなど、子どもの「問題行動」について 
目に見える「子どもの問題」を、すぐに取り去らないといけないやっかいなものと思わないこと。代わりに、この「問題」はこの子が一生懸命あみだした大切な対処法なのかもしれないと思って向き合うこと。たとえば、だらけているだけ、さぼっているだけに見えたとしても、そのような方法で「NO」を伝えようとしているのかもしれません。(中略)「この行動は、この子にとって何か意味があるのかもしれない」と、いつもどこかで思っておいた方がいいと言いたいのです。(p.87)

 

◎学校に行き渋りをする子について
子どもが「行きたくない」と行っている場合には、エネルギーはそれほど失われていないか、もしくは親に対して「しんどい」と正直な気持ちを話せる関係性があると推測される。ある意味、子どもが親の力を信頼している状態。(後略)
子どもが「行きたいのに、起きられない」と言っている場合は、すでに子どもはかなり長期間がんばっていて心身ともに疲れ切ってしまっているケースもある。(後略)
原因が何であれ、親にできることは、家で安心して過ごさせること。(中略)正直な気持ちを親に話せることや、安心できる場所でリラックスして過ごすことで、子どもは元気を回復します。そうすれば、子どもは自分から動き始めるのです。(p.100-102)

 

まとめ(本書から学んだこと)

 

★育児そのものが絶対的な幸せである、という原点を忘れない。

 

★子どもを元気な状態にしておけば、あとは自分で道を探っていける。そう信じること。

 

★「母親は、子どもに去られるためにそこにいなければならない」

             ー エルナ・フルマン(心理学者)の論文タイトル

子どもは、自分のタイミングで自分なりのスタイルで、親から独立していく。

「そこにいる」というのは、子どもの選択を見守り、必要な時はいつでも安全な場所に戻れることを保証する態度。

 

 

<紹介された本で、読んでみたいもの>

 

『子どもの宇宙』(河合隼雄・著/岩波新書

『魔法のしつけ』(長谷川博一・著/PHP研究所

『トラウマ返し』(小野修・著/黎明書房

『子どもと生きる・あまえ子育てのすすめ』(澤田敬・著/童話館出版)

『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』(高橋孝雄・著/マガジンハウス)