教育雑記帳

2013年早生まれ男子のママ。英語教育、理数教育、親の観点から読むビジネス書についてゆるく書いています。

【おかねの教育】子どもたちに人気のズッコケ三人組が起業!

うちの息子の読書スタイルは、ハマったシリーズや作家の本は一通り読む、というもの。保育園生時代は「キャベたまたんてい」シリーズ、「かいけつゾロリ」シリーズ、「おしりたんてい」シリーズ、「おばけずかん」シリーズ。小学生になってからは「ぞくぞく村のおばけ」シリーズや「1ねん1くみ1ばん○○」シリーズなど。そして今、一番ハマっているのが「ズッコケ三人組」シリーズ。昭和から平成前期に子供時代を過ごした私たちには懐かしい、大人気を博した児童文学です。その中の1冊が、実は三人組の起業体験を描いているのです。以前、アメリカの子供の起業物語について記事を書きましたが、それの日本版、という感じかな。ちなみに、息子はこの本で「株主総会」という言葉を覚え、経済ニュースにも反応していました。

 

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うわさのズッコケ株式会社

 那須 正幹 著、前川 かずお ・イラスト、ポプラ社 (1988/11/1)

 

おすすめ度: ★★★★★

対   象: 親&子(小学生)

 

 おなじみ三人組が、今回はお弁当屋さんを立ち上げる話。主人公たちが株式会社を立ち上げ、商売の過程が丁寧に描かれており、ビジネスの回る仕組みがわかるのですが、小学生の身の丈の金額や商材、工夫の仕方などが詰まっていて、身近に感じられるのが本書の魅力です。

 

 ことの発端は、三人組が飲まず食わずで魚釣りをしていたという話を聞き、ハチベエのお父さん(八百屋のおやじ)が「千人も釣り客がくるんだったら、商売してみなよ」と提案したことから。いわしが大量に釣れる季節、港は大勢の釣り客で賑わうのに、近辺には店がないため、ジュースや弁当を売ったら儲かるのではないか、というのです。

 ハチベエハカセとモーちゃんを誘い、それぞれの小遣いを出し合って元手にしようとするものの、とても足りない。言い出しっぺのハチベエが親に融資を打診したが断られます。仕方がないから、クラスの友人たちに事業資金の借り入れを申し込むところから事業化の話が本格化していきます。借用証書を書き、利息をつけて週明けには返す、と説明してかき集めたお金が15,000円。これを元手に商売がはじまります。

 お弁当屋の初日は無事に完売し、総資金は20,240円になりますが、三人はもう少しお金を借りて事業拡大を試みます。株式会社をつくる、というのです。この過程で、株券や配当金、資本金、出資、給料、株主総会などの用語が出てきます(株券が電子化されている今では、「株券」の説明が古くて懐かしいです 笑)。株主を募るため、クラスメイトの前で事業についてのプレゼンを行いますが、子供たちの間で大人顔負けの質疑応答が行われます。

 株式会社化してからは、商品ライナップの充実と、より付加価値の高い商品提供による値上げも実行。たとえば、カップラーメンをただ売るだけでなく、クラスメイトの中華料理屋の息子の助けも借りて、安くて美味しいラーメンを提供するのです。つまり、カップラーメンより安いインスタントラーメンを仕入れ、一手間かけてより高い値付けをし、粗利益を上げるプロセスが描かれます。商売が順調であることを聞きつけ、クラスメイトからの出資希望も増えます。また、小さな事件も起きます。たとえば、ツケで買ってお金を払わない釣り客がいたり、大量の在庫を抱えてしまったり、顧客が消えてしまったり(=天気が悪かったり、釣りシーズンが終わったり)。挙句の果てに、株主総会で経営責任を問われたり!そう、これこそ、商売のリアル!

 株主総会での子供達のやりとりもすごい。会社の経営内容について、株主に報告し、誠意を持って説明。上場企業の粉飾決算や誠意ない商売が明るみに出て株価急落のニュースに接することもある私たち大人には、耳が痛い話です(涙)。そして、株主たちからの突き上げに対して、動じることなく説明をするハカセ、大したものです。

 倒産の危険性を抱えたお弁当屋も、物語の後半で様々な幸運に助けられながら巻き返し、第二回の株主総会を迎えます。経営報告と素晴らしい配当金の話を伝えたあと、会社の解散を発表するハチベエですが、株主たちは、会社存続を希望します。すると、株主の一人がほかの株主たちの前で言うのです。株を買うときは、お金を出せば、遊んでいても配当金が入ってくるって思ってた。でも、手伝ってみて、お金を稼ぐ苦労や大変さを理解できた、だから、くたびれたからやめたいという気持ちがわかる、と。

 

 今、私たちの周りには、いかに楽して稼ぐか、不労所得を増やすか、という情報が洪水のように溢れかえっています。論理としては、いくら働いてもワーキングプアだ、搾取されるだけだ、だから他の稼ぎ方を探そう、実践しよう、というものです。しかし、私はそこにどうしても違和感を感じてしまいます。働いても働いてもそれに見合うだけのお給料がもらえなければ、それは確かにおかしい。でも、社会に価値を提供してお金をいただく、そのために汗をかくし大変なことだってある、というのがお金を稼ぐことの本来の姿ではないのか、と。だから、ハチベエたちの、懸命に働き商売をする姿に、私は心を打たれ、なんども息子と読み返したいと思ったのです。