教育雑記帳

2013年早生まれ男子のママ。英語教育、理数教育、親の観点から読むビジネス書についてゆるく書いています。

【おかねの教育】ワクワク楽しい図鑑!子供がお金と経済を学べるベストの1冊かも!

 私自身が子供のころにお金については特に親からの教育を受けず、その必要性を痛感していること。今はささやかながらも会社を経営していて、息子にも早くからお金との付き合い方や経済がまわる仕組みを知り考えて欲しいこと。そこから、お金や経済・社会についてわかりやすく説明をしている本を意識的に読むようにしています。

 そんな中で出会ったこの本は、仕組みの解説のみならず、具体的に世界のお金持ちを紹介したり彼らの活動を取り上げるなど、切り口がおもしろくてワクワクしました。

 

『目で見る経済 「お金」のしくみと使い方』

アルヴィン=ホール・著、相良倫子・訳 さえら書房 (2009/04)

 

おすすめ度: ★★★★★

対   象: 親&子(小学生)

   

本のポイントと構成

ひとことでいうと、よくできている絵本です。大判で分厚過ぎず、カラフルで絵や写真もふんだんに使われた楽しい本です。同時に、内容も大変充実しています。想定読者層は小学生ですが、親が読んでも勉強になります。

 

この絵本は、

  1. お金の歴史
  2. お金の使い道
  3. 経済学って何?
  4. 仕事とお金

という4つの大項目で構成されていますが、これまで読んできた多くの類書と異なるのは、そのカバーする範囲の広さ。様々な視点やテーマに触れていて、とにかく色々な角度からお金のことを考えたり知ることができます。

この本は、日本では10年前(2009年4月)に出版され、今は書店の店頭で見ることがほとんどありません。なので、ほかの子供向け本との比較で、特に違いを感じ面白かった箇所を中心に紹介したいと思います。

 

ストーリーで読める「お金の歴史」

ほとんどの子供向けの本が、貨幣の歴史を取り上げています。その多くは、大昔の物々交換の時代から、お金という概念が生まれた経緯、世界の面白貨幣の紹介など、「お金そのもの」について、事実を淡々と列記しています。そういう意味では、教科書的で味気なく、(個人的には)面白く読む、という感覚はありませんでした。

 

しかし、この本ではお金そのものに加えて、お金を取り巻く様々な歴史的事件やトピックも歴史年表に登場させています。たとえば、中世における交易の発展、近世欧州の商業の国際化、それにともない誕生した株式会社やチューリップバブル、自由競争・資本主義・共産主義といった概念、近現代の金本位制と兌換紙幣、20世紀以降の不換紙幣、ケインズ経済学やクレジットカード、ATM、ユーロの誕生、株と債権やキャッシュレスまで。絵や写真もふんだんに使いながら、ストーリーを追えるような構成で見せてくれます。ストーリーで読める、という意味ではむしろ大人の方が楽しめるかもしれません。

 

今すぐ役立つ「お金の使い方」

他の章を読まなくても、まずここを読んで欲しいくらいです。

 

最初に、子供が持っているお金はどうやってそこにやってきたのか、と問いかけます。(息子を見ても、自分がいくらお金を持っているかに興味はあっても、出どころをきちんと意識したことは、ないはず。)次に、それを使うか、貯めるか、預けるか、投資するか、という選択肢が提示され、それぞれの注意点にも触れています(例:手元の貯金箱に入れっぱなしだと、通常はインフレでお金の価値が下がる、など)

 

お小遣い帳のつけ方については、しばしば目にしますが、そもそも、子供には買い物上手になってほしいもの。この章では、「買い物上手になるコツ」というページもあります。「それは本当に欲しいもの?」とか、割引率にごまかされるな、とか、バーゲンに誘惑されるな、とか。(親である私たちも、胸に手を当てて反省しなければならないかも。。。)子供は、親から言われると素直に聞けないかもしれませんが、絵本を通じてなら、ちゃんと考えてくれそうですね。ほかに、必需品と贅沢品、物価変動、将来のためのお金(年金や保険など)、大金を受け取る時の考え方(まとめてもらう? vs 分割して?)まで、様々な視点を提供してくれる。

 

経済学をどう子供に説明する?

子供に経済の仕組みを説明する試みは、多くの類書でも行われていますが、本書で「うまい説明の仕方だな」と感じた箇所を紹介します。

  • 経済学とは、人間、人間の感情、人間の行動に関する学問、と定義。(「お金を研究する学問ではない」、「人々、企業、政府、あるいは国が作るものや買うものを学ぶことでもない」)
  • 「世界の4大資源」を天然資源、資本的資源、人的資源、起業家精神と提示。一般的には、「経営資源」としてヒト・モノ・カネ、最近だとこれに情報が追加されますよね。ここでは、「起業家精神がなければ、何も始まらない」として、アイディアや挑戦する心、企画なども「資源」だと断言しています。

経済用語やその意味するところをひととおり説明した後のページでは、幸せとお金について触れ、ブータンの「国民総幸福量(GNH)」まで紹介しています。

 

仕事とお金、そして大金持ちについて

会社の仕組み、働く理由や未来の働き方の説明から始まり、より良い世界を作るための経済活動(フェアトレードグラミン銀行含む)にまで触れています。

 

面白かったのは、大金持ちにも焦点を当てていること。世界の大富豪にはどういう人たちがいるか、彼らの写真や経歴を紹介し、お金持ちのお金の使い方(贅沢品も買えるが慈善活動に力を入れる人も多い)についても記述があります。また、「億万長者」というページでは、お金持ちになる一つの方法として、自分で事業を立ち上げることを提案し、成功するための条件を説明しています。

 

お金持ちに焦点を当てたページがあることで、「お金持ち」と呼ばれる人たちが、具体的に何をしてお金持ちになったのか、どういう生活をしているのか、自分がなるにはどうすればいいか、子供たちに夢とヒントを与えてくれると感じました。

 

 気になる点

最後に、いくつか気になる点も挙げておきます。

  • ページによっては目がチカチカする。カラフルなのがアダとなっています。
  • 海外の翻訳絵本なので、ところどころで、日本では馴染みのない事柄が出てきます。たとえば、小切手の使用や子供の新聞配達のアルバイトなど。
  • 一部、内容が古い。日本で出回っている本書は2009年4月出版のため(原書は英国で2008年7月出版。新装改訂版が2015年11月に出ています)、仕方ないことですが。たとえば、世界最大の複合企業としてゼネラル・エレクトリック(GE)を紹介していますが、現在は「シンプルなGE」として金融や医療機器などから撤退し、「複合経営からの決別」を宣言しています。

それでも、大まかな流れとしては、十分に有用な本だと思いますし、ぜひ手元に置いておき、子供と一緒に折に触れて手に取りたい本だと思います。