教育雑記帳

2013年早生まれ男子のママ。英語教育、理数教育、親の観点から読むビジネス書についてゆるく書いています。

【家庭教育】『すべての子どもは天才になれる、親の行動で』〜「子育ては親の責任」を噛み締める

息子の通う小学校、夏休みは3週間で終了し、2学期が始まって2週間が過ぎた。

猛暑は続いているけれど、ボヤボヤしているうちにあっという間に秋がやってくる。

子どもも、あっという間に大きくなってしまうので、今、この時期に親として子どもにしてあげられることはなんだろう?と問う時間を惜しまないようにしている。

で、タイトルにドキッとさせられたこちらの本。

別に我が子に「天才」になってもらいたいわけではないけれど、自分の人生を堂々と生きていってほしい、そのための普遍的な力をつけてほしい、そう願って手に取った。

親としても、習い事や、それを始めるタイミングなども含めて、周囲の幼児教育ブームなど雰囲気に流されることなくやるべきだ(だった)、ということを改めて考えさせられた。

 

『すべての子どもは天才になれる、親の行動で』

船津徹・著/ダイヤモンド社(2018/12/12)

 

すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。

すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。

  • 作者:Toru Funatsu
  • 発売日: 2018/12/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

 

1. 総評★★★★☆

キーワードを抜き出すと、ほかでも読んだり聞いたことがある内容が多い。ただし、主張やその根拠が、具体的に説明されていたり、明確に言語化されていて(p.28「16のよい習慣」、p.42「エリク・エリクソンのライフサイクル理論」、p.60「習い事は10年続ける」など)、漠然とした一般論の繰り返しが目に付く類書やブログ記事よりも、はるかに説得力が高かった。

 

特に習い事については、娘を公立学校からハーバード大学に合格させた廣津留さんと主張が重なる。習い事などの課外活動も、100%の努力を傾けるように励ますことが、「あきらめない力」を育み、自分のアイデンティティ確立につながる、という主張は目から鱗だった。日本では、習い事といえば、片手間というか、趣味程度で考えられているけれど、米国のアイビーリーグに合格する学生は、「文武両道」レベルどころか、勉学も課外活動(スポーツ、アート、ボランティア等)も地区や全国トップレベルだという。

全てを完璧に実行しようと思うと、親としては疲れそうだが、まずはやれるところから少しずつ着手し、意識していこうと思う。折に触れて思い出せるよう、これらの具体的な主張や根拠を備忘録として残そうと思った。

 

また、個人的には自分自身の生き方についても振り返るきっかけになった。最近、マンネリ感を抱いて、ただなんとなく日々を過ごしている自分に薄々と気づいていたが、「無意識の行動を意識的に変える!」「100%の力で努力をする!」の言葉に触れ、今の自分に喝を入れなければ、という気持ちになった。

 

2. 本書を手に取った理由

兄弟の子ども(甥や姪)があっという間に大きくなるのを目の当たりすると、我が子の貴重な子どもの時期に、親としてやっておくべきことを、改めて意識して毎日を過ごす必要があると痛感した。

ここまでの親としての我が身を振り返ると、「子育ては親の責任」というのは、自明のこととして日々過ごしていたが、自分は、本当にその意味するところをわかっているだろうか?保育園・小学校や習い事教室への丸投げをしていないだろうか?もっと意識してやれること、やるべきことがあるのではないか?との思いに至った。

 

3. 優秀な子が育つ家庭で行われる3つの柱と、それらの身につけ方

 <よい習慣>

子どもの人間性を作るベースになる行動習慣。性格やメンタリティ、やる気なども含めた人間性は、よい習慣によって作られていく。

親は、子どもに人生哲学や大枠の方針(学問は大切、スポーツをするべき、など)、守るべきルールを伝えるが、具体的にどうするかは本人に選ばせ、親はその選択をサポートする。子どもの興味を「特性(強み)」に発展させ、よりレベルの高いものに変換していく。(例:ゲームを何時間もするなら、「集中力」に焦点をあて、より集中力を伸ばすための習い事を勧める。たとえば、プログラミングを学ばせて「ゲームで遊ぶ」から「ゲームを作る」という体験をさせる)

 

習い事について

子どもの特性(強み)を発揮できる「習い事」を通じて、習慣力・勤勉性を身につけさせる。最も大切なのは、小中、できれば高校時代も通して10年以上継続すること。やり抜くことで、成功体験を積み、自分に自信を持てる。様々な習い事を取っ替え引っ替えでは「失敗経験」を積み重ねただけになりかねないので、特性に合っているか、見極めが重要。また、発表会や大会などで競争をさせることが極めて重要。場数を踏んで本番に強くなる力を育てる。ただし、結果は二の次で、自分の力を出し切ることに価値がある。競争においては、手の届く範囲内でのレベルで行うことが理想。また、コーチ任せではなく、親がサポートすることが重要。

 

衝動をコントロールする教育

衝動をコントロールするとは、自分の中に湧き上がってくる感情の変化に気づき、それを上手にコントロールすること。自分を律する習慣。大人でも身に付けるのが難しいからこそ、早くから身に付けることが大きなアドバンテージとなる。1、2度では身につかないので、何度も言い聞かせて習慣化させる。

今やるべきことに集中できずに他のことに心が奪われると、人生が前に進まない。衝動性には以下の4つのタイプがある。

  • 切迫感:何でも今すぐやらないと気が済まない
  • 計画性の欠如:考えたり計画したりせずに行動する
  • 忍耐性の欠如:長い時間がかかるタスクをすぐに諦める
  • 刺激・快感の追求:刺激や快感が得られることばかりやろうとする

衝動をコントロールする習慣を身に付ける方法には、以下の3つがある。

  1. 衝動の存在を気づかせる:宿題をせずにゲームをする理由は?面倒だから?宿題が難しいから?ゲームを早く攻略したいから?理由を意識させ、支援すべきところは支援する。親子でルールを決める。
  2. 衝動をコントロールする意味を説明する:衝動が起きることは誰にでもある、当たり前のことだが、振り回されないようにする。衝動で行動すると他者や自分にどんな影響を与えるのか考えることを教える。
  3. 衝動をコントロールする方法を教える:「衝動が怒ったらゆっくり深呼吸」など、感情を落ち着かせる方法と伝える。その後、冷静に考えてから行動するように言い聞かせる。

 

 無意識の行動を、意識的な行動に変えていく

人生は「選択」の連続。早起きも、運動も、読書も、怠けることも、無意識のうちに選んでいること。「自分の行動は自分で選択している」ことを子どもに意識させるには、親が子どもに指示して何かをさせるのではなく、やるべきこと・やりたいことに優先順位をつけることを教える。そして、「自分で決めていいよ(親は守ってあげるから、しっかり挑戦していいよ)」「あなたならできる」のスタンスを守ること。人の意見や目先の利益に流されるのではなく、自分の考えを信じていくことで、悔いのない人生を歩める。

 

忙しくさせることで、自己マネジメント力が身に付く

有り余ったエネルギーは、課外活動に向ける。子どもは暇になると時間とエネルギーが有り余って、ただ時間を潰すための無意味な行動が増える。習い事以外にも、家族で出かけたり地域のイベントに出てみるなど積極的に外に出かける習慣を作ることで、子どもの時間管理力、自己管理力を覚えさせる。

 

<思考力>

誘惑の多い世の中で、子どもがよりよい道を選んでいくために欠かせない能力。特に、周囲に惑わされずに物事の本質を見抜く思考(クリティカルシンキング)と、柔軟な思考を可能にする地頭力が二大要素。この能力を身に付けるトレーニングを行う。

 

社会が大きく変化していく中でも、決して悲観せず、むしろ新たなチャンスを見出し、仕事を生み出していく、そんな発想を可能にするためには、自分の頭で考えられる思考力が欠かせない。

何よりも、進学先や仕事選びなど、重要な選択で後悔しないために、絶対に必要不可欠なもの。判断に迷ったときに「みんなと同じ」「誰かが言っていたから」と安易な理由で決めるのではなく、選択の質を高めるためのもの。正解のない人生で、「自分が納得できる解」を出す訓練が自分らしい人生を送るための方法。

親が自身のバイアスに打ち勝ち、情報に振り回されず、「こういう子どもに育てる」という信念を持って子どもと接していくこと。「自分の人生は自分で決めていいのだ」と子どもに繰り返し伝え、「何が起きてもあなたの味方、あなたを守るよ」と言葉と態度で伝える。

 

 思考力(クリティカルシンキング)を鍛える方法6つ
  1. 子どもに「なぜ?」と問い、自分の考えについて深く考える習慣を促す。
  2. YES/NOで答えられない質問をし、子どもの思考回路の言語化を促す。
  3. 日常の中で「何で?」を引き出し、わからないことは一緒に調べる(考える)。
  4. 子どもに小さな選択をさせる。小学中学年以上は家電や旅行など一緒に決める。
  5. 本を読むだけでなく、本を材料に問い(ツッコミ)をしていく。
  6. インターネット広告について考えさせ、情報を鵜呑みにしない習慣をつける。

 

ただし、「斜に構えすぎる」ようにならないよう、注意が必要。批判することを前提に情報に触れていると、結果として大切な情報を見落とすことになる。情報はニュートラルに受け入れるが、鵜呑みにせず、客観的・多面的に検討した上で、自分にとって最良の意思決定をすることを忘れないこと。 

 

伝える力の伸ばし方〜話す力

小学校高学年以上からは、その日のニュースや新聞記事などからトピックを見つけて、親子で「賛成」「反対」に分かれてディベートをしてみる。ポイントは、「賛成」「反対」両方の立場から議論できるようにすること。最初は子どもが選んだ立場で立論できるように練習するが、慣れてきたら、自分の考えとは反対の立場でも議論をさせてみる。

 

伝える力の伸ばし方〜書く力

思考力・論理力・語彙力・表現力が必要なエッセイは「5パラグラフエッセイ」で書く。最初に与えられた課題に対して自分が伝えたいこと、理由や根拠を3つ、結論、で構成されている。小さい子どもであれば、昔話を「最初」「真ん中」「最後」と物語の構成・段階を意識して口頭で再現させる。また、楽しいお題を与えて根拠を伴う文章を書かせる。

 

 <アイデンティティの確立>

自分はどう生きるかの指針をはっきりと決めていくための力。子どもは様々な経験の中で、自分は何者であり、どう生きたいかを明確にしていきます。このアイデンティティの確立こそが教育の最終目標であり、親はそのために子育てをしている、と言っても過言ではありません。

 目先の受験に踊らされて「学歴主義」に陥ると、子どもの本来の能力を潰すことになりかねない。本来、子どもがやりたいことを見つけるには、教科書から離れる必要がある。スポーツや音楽に真剣に取り組んだり、アートに触れたり、友達とぶつかり合ったり、文化や年齢んお異なる人と関わり合ったり、また、その中で失敗と成功を体験し、泣いたり笑ったり、悩んだり解決したりといった試行錯誤を繰り返すこと、そこから生まれた「強み(特性)」が必要。

 

<3つの柱の関係性:ピラミッド構造になっている>

      【アイデンティティ】  :ぶれない自分らしさ

     【 思  考  力  】 :人生の方向性を決定づける

    【  よ い 習 慣   】:根底にあるベース

 

4. その他、参考箇所を抜粋

「16のよい習慣」について

優秀な子どもは、何事にも一生懸命に打ち込み、手を抜かない。勉強も、課外活動も、恋愛も遊びも、自分のための努力を惜しまず、100%の力で打ち込むこと。このような資質を身に付けるための、「16のよい習慣(Habits of Mind)」(p.28):

カリフォルニア州立大学名誉教授のアーサー・コスタ博士が提唱)

  1. やり抜く習慣・・・あきらめない、やり続ける力
  2. 衝動をコントロールする習慣・・・行動する前に考える、落ち着く力
  3. 共感して聞く習慣・・・気遣う、集中する、注意深く聞く力
  4. 柔軟に考える習慣・・・別の可能性を考える、違う見方をする力
  5. 思考を思考する習慣・・・自分の思考の偏りに気づく、考え直す力
  6. 正確さを追求する習慣・・・念には念を入れる、洗練する力
  7. 疑問を持ち、問題定義する習慣・・・なぜ?どうして?根拠は?と問う力
  8. 知識や経験を活かす習慣・・・思い出し、応用する力
  9. 明晰に考え、伝える習慣・・・はっきり話す、言葉を選ぶ力
  10. 五感でデータを集める習慣・・・感じてみる、触れてみる、感性を活かす力
  11. 想像、創造、革新する習慣・・・ユニーク、独創的である力
  12. 世界の神秘と発見を楽しむ習慣・・・よく見る、夢中になる、とりこになる力
  13. チャレンジする習慣・・・リスクを冒す、勇敢である、冒険する力
  14. ユーモアを見つける習慣・・・肩の力を抜く、楽観的になる力
  15. 共に考える習慣・・・協力する、共に学ぶ、持ちつ持たれつの関係を作る力
  16. 常に学び続ける習慣・・・変わり続ける、興味を持ち続ける力

習慣を身に付けるための仕組み作り例として、ワイキキ小学校での事例を紹介。

16の習慣のうち、毎月最低一つの習慣をテーマに掲げ、学校と家庭が協力して子どもに意識づけをする。たとえば、「やり抜く習慣」がテーマであれば、授業中にわからない問題に出合ったときに「あきらめないで!」と生徒同士が声を掛け合う。先生も家庭でも「やり続けよう!」「あきらめないで!」と共通の声がけをする。

 

人間の成長課題を教えてくれる「ライフサイクル理論」

人間の成長には段階的なステージがあり、それぞれのステージにおいて乗り越えるべき課題を「どう克服したか/できなかったか」が、その後の人間形成に影響を与える、という「ライフサイクル理論」(アメリカの発達心理学エリク・エリクソンが提唱)

  1. 乳児期(0歳〜2歳)課題:基本的信頼感・・・親子のスキンシップ
  2.  幼児前期(2歳〜4歳)課題:自律性・・・自分でやらせる
  3. 幼児後期(4歳〜6歳)課題:自主性・・・自発的な意欲が生まれる時期で、スポーツや音楽などに挑戦する機会を与える
  4. 児童期(6歳〜12歳)課題:勤勉性・・・自分の課題に挑戦し成し遂げることで「喜び」を見出す。勉強・スポーツ・音楽・アートなど根気強く継続させる。
  5. 青年期(12歳〜20歳)課題:アイデンティティ
  6. 成人期(就職〜結婚)課題:親密性
  7. 壮年期(子育て時期)課題:世代性
  8. 老年期(リタイア期)課題:統合性

児童期までの成長課題が克服できると、ティーンエイジャーになって「アイデンティティの確立」がスムーズにできるようになる。アイデンティティが確立すれば、自分の進むべき道を自分で見つけ、自分の目標を実現するためのスキルを身につけていく。

 

コンピュータ教育について

理想は、子ども専用のパソコンを買い、慣れさせる。

欧米の小学校では、1年生からタイピング(ブラインドタッチ)やワードなどの基本ソフトの使い方を学ぶ。2〜3年生でインターネットの利用方法、メールアカウントの作成方法を学び、パワーポイントやエクセルでプレゼン発表を指導する。高学年からは、宿題や成績の管理は全てインターネット上で行い、画像作成、音楽作成、動画作成なども体験。

プログラミング教室については、他の習い事同様に、通学前に家でコンピュータを触り、基本的な知識と技能は家庭で教えておく。

 

中学からは環境を変えることを考慮する

Get out of the comfort zone. 

常にワンランク上を目指して努力を継続できるような環境を整える。