教育雑記帳

2013年早生まれ男子のママ。英語教育、理数教育、親の観点から読むビジネス書についてゆるく書いています。

【教育一般】ちょっと前の本(竹内氏×茂木氏による「最先端の教育」)

2年半ほど前に出版された本。

入手した当時、途中までしか読んでいなかったので、改めて手に取った。

結論としては、特に目新しい考え方はなく、むしろ書中で茂木さんが時々発する言葉がちょっと極端だと思うところもあった。海外の奨学金の事例など面白い情報があったので、備忘録として残しておく。

 

 

『10年後の世界を生き抜く最先端の教育 日本語・英語・プログラミングをどう学ぶか』

竹内 薫 (著)、茂木 健一郎(著)、祥伝社、2017/11/2

 
<総評> ★★★☆☆
 
新しく知り得た情報もあったが、大部分の考え方は目新しいわけではない。竹内氏の設立した学校の宣伝も兼ねた本かな、という印象。
親としては、これからの社会をイメージし、必要な能力を吟味特定し、それを身に付けるための環境整備、手助けが必要ということ。
 
<手に取った理由>
 
当時、子供はまだ保育園児だったが、親戚など周囲の教育事情を知るにつけ、小学校入学以降の我が子の教育について考えるヒントを求めた。
世間では、シンギュラリティだ、AI失業だ、プログラミングや英語が小学校で義務教育化される、などと騒がれていた。子を持つ親はもちろんのこと、今の社会システム下でうまく逃げ切れると思えない若年層含めて、今後の生き残り方を本格的に模索始めた時代。最先端の教育って何?竹内氏の学校ではどんな取り組みをしているの?という問いへの答えを探して手に取った。
 
<新しく得た情報>
・「グーグル・スカラー」: 学術論文などにアクセスできる。
 アメリカ在住の高校生が膵臓癌を初期段階で発見する検査法をカーボンナノチューブを使って開発したというトークをTEDで行った。(p.31)
 
・「Route H」: 海外のトップ大学を目指す進学塾。
 ハーバードが求めている人材というのは、お互いに学生が教えあえるような学生。(p.57)
 
・「ティール・フェローシップ (Thiel Fellowship)」:PayPal創業者のピーター・ティールが創設。2年間で10万ドル(役1000万円)給付。唯一の条件は大学に行かないこと。現時点で大学に行っている人は、ハーバードでもスタンフォードでも辞めること。毎年80人くらい、採択率1%。(p.76)
 
「42」: プログラミングを教える大学。2013年にパリで作られ、2016年にシリコンバレーにもできた。授業料は無料でSAT(大学進学適性試験)の成績も問わないが、フェイスブックやグーグル、アップルなど名だたる会社に就職実績あり。教師はいなくていわゆる授業もない。P2Pでひたすらプログラミングをしていく。(p.112)
 →今年、東京に開講予定(42 Tokyo)。
 
ミネルバ大学: 全米で最難関といわれている、合格率1%台。サンフランシスコのオフィス街の一角にあるけどキャンパスを持たず、学生は寮で共同生活をしているだけ。授業はすべてオンラインで、教授陣は世界中のトップの人たちを抱えている。学生は1年間サンフランシスコの寮で共同生活を送った後、半年ごとに6つの都市(ロンドン、ベルリン、ハイデラバード、ソウル、台北ブエノスアイレス)の寮を渡り歩いて、経験や人脈を増やす。(p.113)
 
・偏差値: もともとは中学の進路指導の先生の親心から生まれたもの。昔は教師の経験と勘に頼っていたので、十分に受かるはずの高校を受験できなかったり、受かると思った高校に落ちたりしていた。子供たちがかわいそうなので、進路指導の先生が合格可能性を客観的に示す指標が作られた。(p.176)
 →偏差値が目標になるようだと、本末転倒、ということ。
 
・「マッカーサーフェローシップMacArthur Fellowship マッカーサー賞)」: 過去の業績ではなく、将来のポテンシャルに対して贈られるもの。受賞が決まると、ある日突然、マッカーサーフェローシップ財団から電話がかかってくる。「あなたはマッカーサーフェローシップの受け取り手に決まりました。つきましては、あなたの銀行口座に60万ドルを振り込みます。この電話がマッカーサーフェローシップからあなたに来る最後の連絡です。」と言われて電話が切れる。つまり、その人に関する情報を徹底的に集めてそのポテンシャルを評価し、6000万円を振り込んでくる。その奨学金をどう使おうが報告義務は一切ない。(p.178)
 
 
<取り入れたいこと、共感したこと、気づき>
 
・サイレント・ピリオド: 外国語を学び始めるときに言葉をインプットするために必要な「沈黙の時間」のこと。その間は表面上、何の進歩もないように見えるけど、ある時期に突然顕著な進歩を見せるようになる。(p.37)
 
 → 幼児が母国語を覚えるときに似ていると感じた。ひたすら言葉をシャワーのように浴び続け、ある日突然、息子が堰を切ったように喋り始めた時の感動を思い出した。さらに記憶を掘り起こすと、鉄棒や縄跳びなど、それまで苦戦していたことが、ある日突然できるようになったことを思い出す。親は焦ってはいけない。親は焦ってはいけない。
 
・学びを教科書中心ではなく、一つのテーマに沿ながら脱線して学び、掘り下げていく。地理の話から大陸移動説、地球のマントルの話、地球を輪切りにする話からニュートリノまで。インターネットで調べ、本で読み、周囲の人に聞く。
 
 → 我が家でも、無意識のうちに実践していたが、これからは意識して脱線していこう。
 
・自分の負荷は自分で決める。自分で自分の課題を見つける。学校の宿題はさっさと終わらせて自分の好きなことをする。
 
単純に子供を野放しにして「好きなことをやればいいんだよ」と言ってもうまくいかない。大人がこれからの時代に「必要とされる人」をイメージし、それに求められる能力を判断して、ある程度の環境を与えてあげる必要がある。